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請負業者が追加変更工事の合意が成立しているとして、追加変更工事の請負代金を請求した事案(東京地判令和3年1月28日)

1 事案の概要

 本件は、共同住宅の建築を請け負った請負業者が,注文主に対し、追加変更工事が発生し、当該追加工事についての見積額での合意が成立しているとして、追加工事代金請求をした事案。
 主たる争点は、①追加工事についての合意の有無等、②工事完成遅延による遅延損害金の発生である。

2 裁判所の判断

(1)追加工事の合意の有無等について

 請負業者が注文者に対し、工事の施工中及び完成引渡し後に各追加見積りを交付したことは認められるが,その支払について具体的な協議はなされておらず,各追加見積りの内容及び金額からすると,被告がこれを黙示に承認する趣旨で受け取ったと考えることはできない。注文主が請負業者に対し書面やメール等での個別の金額に対する査定の意見を出さなかったことなどを考慮しても,各追加見積り記載の金額を支払う黙示の合意がなされたということはできない。もっとも,注文主も各追加見積りのうち追加工事に当たる部分に関する相当の代金を支払う必要があることは認識していたといえるのであって,追加工事代金として相当額を支払うことを黙示に合意していたと認められるとして,追加工事と認定できる工事については代金請求権を認めた。
 なお、注文主が追加工事見積に対して明確に異議を述べなかったことについては、疑問を呈しつつも、契約時において当然に予定されていたと評価できる工事について追加変更工事として工事代金の支払を認めることは相当ではないとして、当初見積もりの前提となった図面に記載されている工事等は、本工事に含まれるものであり、見積落ちに過ぎないとして追加工事として認めなかった。

(2)工事完成遅延について

 契約書の完成予定日は記載していなかったが、工事の完成日を定めた工程表を交付していたことが認められることから,契約の工期を同日までと合意したと認めるのが相当であるとした。その上で、注文主から変更工事の依頼により工期が遅れた分は請負業者側の責めに帰すべき事由に当たらないとして、追加変更工事に必要な期間が終了した時点を完成日と認定し、そこから遅れた日数分の遅延損害金を認めた。

3 コメント

 追加変更工事に関する争いは、①追加工事であるか(本工事に含まれない追加の工事か)、②施工合意があるか否か(明示、黙示含む)、③有償性の合意があるか(サービス工事や是正工事にあたらないか)等でした。
 本件では、①については、契約時の見積書作成の前提となった図面に記載のある内容の工事は、契約時見積書に記載がなく、追加見積書に記載されてあったとしても、それは契約時見積書における見積落ちであり、追加工事に当たらないと判断しました。つまり、契約締結時の図面を参考資料として本工事に含まれるとしました。②については、請負業者側が出した追加工事の見積書に注文主が異議を述べなかった事実だけでは合意が成立しているとは言えないと判断しました。もっとも、当初図面にもなく、請負業者が勝手に施工したとはいえないような工事については、施工合意についてみ認め、③の有償性についても認めました。

(2022.11.9)