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注文主が請負業者に対し、木造建物に関する建物建築請負契約に債務不履行があり同契約を解除したとして、前払金返還請求や損害賠償請求をした事案。(東京地判令和3年6月2日)

1 事案の概要

 木造建物の建築を依頼したところ、設計図書のうちの基礎断面図の記載と異なる施工がされていたことが判明したことから、注文主が請負業者に是正を要求したところ、是正のためには配筋を全体的に解体する必要があることが判明し、請負業者が基礎配筋の一部を解体したが、その後一切工事を行わなかったことから、注文主が債務不履行を理由に契約を解除し、前払金の返還と損害賠償請求を行った事案。

2 裁判所の判断

 請負業者は、コロナ罹患や契約締結前の事情を抗弁として主張したが、コロナ罹患があったとしても工事を長期間行わずなかったことについて帰責性がないとは言えず、契約締結前の事情は考慮要素とはならないとしてた。そして、請負契約上予定されていた完成日までに建物が完成していないのみならず、工事が中断したままで、その後の相当期間経過時点において完成する見込みがないとして、注文主による契約解除を認めた。

 損害としては、完成が遅れたことによる逸失利益、完成が遅れたことにより必要となった資金の借り換えに関する前払い利息、印紙代、一部残された基礎配筋が使用可能か判断するための調査費用、解体費用について相当因果関係のある損害として認めた。なお、家賃収入については、全室満室になったということもできないが、入居者が全くなかったということもできないとして、原告請求の16か月分(当初予定から遅れた期間分)について4分の3を限度で認めた。

3 コメント

 契約上予定された完成日を過ぎた後も相当期間工事が中断したままであったことを踏まえると、債務不履行解除は妥当と考えらえます。収益物件の場合、完成が遅れたことにより得られるはずであった賃料が得られなかったとして、完成が遅延した期間分の賃料収入相当額についての損害が争点となることがあります。多くの事案で損害として認められていますが、満室想定で認められることは考えにくく、本件では4分の3を限度として認められました。

(2022.11.5)