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請負業者が請負代金を請求したのに対し、注文主が補修工事の発生による追加工事などによる精神的苦痛について慰謝料請求をした事案(東京地判令和3年9月14日)

1 事案の概要

 本件は、請負会社が注文主に対し、外壁塗装等の請負代金の支払いと求めたところ、注文主が請負業者に対し、請負業者よる杜撰な工事等により精神的苦痛を受けたとして慰謝料請求するとともに、工事の完成が遅滞したとして約定の遅延損害金を求めた事案。

2 裁判所の判断

(1)慰謝料請求について

 請負業者の工事が総じて杜撰なものであり、本来であれば必要のなかった工事が行われることによって、注文主は、生活の本拠である自宅において騒音・振動等の工事に伴う不利益をより長期間(37日間)甘受せざるを得なかったのであるとして、債務不履行又は不法行為に基づき、精神的苦痛に対する賠償をする義務を負うとして10万円の慰謝料を認めた。
 一方、補修工事をめぐる協議等の場面における請負業者側の対応により精神的苦痛を受けたとする注文主の主張については、慰謝料を生じさせるほど高度の違法性があったということはできないとして否定した。

(2)約定遅延損害金について

 工事請負契約における完成の成否は、工事が予定された最後の工程まで一応終了したか否かによって判断すべきであって、予定された最後の工程まで終了しているものの、それが不完全であって修補を要する場合には、工事は完成しており、あとは瑕疵担保責任の問題になるにすぎないと解するのが相当であるとし、本件では、シーリングの一部未施工があるが最後の工程まで終了しているとして、遅延損害金は認めなかった。
 なお、請負業社側が工事遅延により迷惑をかけた旨謝罪しているが、それは、慰謝料を支払う旨の提案であり、完成の成否を左右するものではないとした。

3 コメント

 建築訴訟においては、瑕疵が修補されれば損害は賠償されたとして慰謝料請求を認めない事例が多いですが、本件で慰謝料請求が認められたのは、元々の工事が杜撰であったことや外壁工事で建物の周囲が足場等で覆われていたという事情も加味されたものと考えられます。
 なお、工事完成の有無についての判断は、一般的な判断方法によっています。

(2022.10.30)